【味噌マガ】花咲かじいさんは麹職人!?桜と糀がつなぐ発酵の物語
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■当たり前のことをいつまでも当たり前に…
越前有機蔵マルカワみそ
【味噌マガ】花咲かじいさんは麹職人!?桜と糀がつなぐ発酵の物語
蔵の菌と共に夢を醸す”味噌マガ”
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味噌マガ読者の皆様
マルカワみその河崎紘一郎です。
4月になりましたが、いかがお過ごしでしょうか?
こちら福井は「三寒四温」の言葉どおり、寒い日と温かい日が交互にやってきています。
今年は、整備一年目のタケノコ畑にも入っていますが、どうやら裏年のようです。2月の寒波の影響もあるのでしょうか?竹の葉の色は、昨年の鮮やかな緑とは異なり、まるで夕焼けを映したような赤みが強くなっています。
「食べ物をつくること」
それは、大自然の営みの中から、人間がほんの一部を分けてもらっているにすぎない…。そんなことを、改めて実感しています。竹や里山から学ぶことは尽きません。
「自然に学ぶ味噌作り」
ある蔵元さんがモットーにしている言葉です。シンプルだけど、深いですね。まるで熟成された味噌のようです。
今回は『花咲かじいさんは麹職人!?桜と糀がつなぐ発酵の物語』をテーマにお届けします。
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◆『花咲かじいさんは麹職人!?桜と糀がつなぐ発酵の物語』
皆さまのお住まいの地域では、桜はいつ頃咲くのでしょうか?
このメールマガジンがお手元に届くころには、福井の桜も開花を迎えていることでしょう。
『桜』
日本を象徴する花のひとつであり、古くから人々に愛されてきました。
歌や和歌、絵画など、さまざまな形で表現されてきた美しい桜。
これまで「桜が嫌い」「見たくない」という人に出会ったことがありません。それほど、日本中の人々に親しまれている花なのだと感じます。
今回は、そんな桜にまつわる興味深いお話をご用意しました。『花咲かじいさん』のおじいさんは、実は麹職人だったのでは!?という説です。諸説ありますが、一つの見方として楽しんでいただければと思います。
むかし、むかし、あるところに、心優しいおじいさんが住んでいました。おじいさんはポチという不思議な犬と出会いましたが、意地悪なおじいさんによって命を奪われてしまいました。心優しいおじいさんは、ポチを弔ったあと、その灰を使い「枯れ木に花を咲かせましょう」と桜の木に灰をまきました。すると、美しい桜が咲き、お殿様や街の方々を喜ばせました。
大まかなあらすじは、このような内容ですが、ここに「麹(こうじ)」との関係があるのでは?という説があるのです。
理由を3つ挙げますね。
まず、「麹」という漢字は、蒸した穀物(米・大麦・豆など)に麹菌をつけ、発酵させたもの全般を指します。そして、「糀」は「お米に花」と書くように、特に米麹を指す言葉です。実は、私が駆け出しのころ、糀の加工をお受けする機会がありました。
「このお米に花をつけてほしい」
ご年配のお客様が、このようにご依頼くださいました。とても印象的でした。こうじ菌は発酵が進むと、白い菌糸を伸ばし、お米全体をふわりと覆います。この様子がまるで花が咲いたように見えることから、「糀(こうじ)」という文字が生まれました。
次に、昔は麹菌を培養する際に、木灰を使っていました。灰には雑菌を抑え、発酵環境を整える役割があったのです。ここで花咲かじいさんの「枯れ木に灰をまく」シーンを思い出してください!もしかすると、この灰は「種麹(たねこうじ)」を象徴しており、「枯れ木(=お米)に花を(=こうじ菌)」咲かせることと重なるのではないでしょうか。
最後に。実は、意地悪じいさんも、心優しきおじいさんと同じことをしました。ここほれワンワン、枯れ木に花を咲かせましょうと。しかし、目も当てられないほど無惨な結果を招きます。純粋な思いのおじいさんと、自分の利益を貪るおじいさん。
はるか大昔、冷蔵庫のなかった時代。人々は食べ物を保存するために工夫を重ねました。食べ物を保存するということは、死活問題でもあったのです。最初は塩を用いて保存性を高めました。そして、その過程で「麹菌」が食材の保存だけでなく、旨味を引き出すことを発見したのです。その結果、日本には酒・醤油・味噌・酢・漬物・鰹節など、多くのすばらしい発酵食品が生まれました。先人の智慧の結晶です。
「醸造は人なり」
決して忘れてはいけない言葉の一つです。
世のため、人のために尽力される麹職人と我利我利亡者の麹職人。発酵業界がいつまでも前者であるようにと、先人たちからの戒めの意味も込められているのでは、と私は感じています。
今年も全国各地で桜が咲き誇ることでしょう。その美しい花を眺めながら、ふと、
「花咲じいさんは、麹職人だったのかもしれない…」
そんな想像を楽しんでいただけたら嬉しいです。
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いのち咲く お米に糀 美桜かな
10年以上前のことになりますが、子どもの名前をどうしようか? と悩んだ時期がありました。
「みんなを愛し、愛されるような存在になってほしい」
そんな願いを込めて、私はある名前を思いつきました。
美しい桜のように…「美桜(みお)」はどうだろう?
そう妻に相談したところ、返ってきたのは一言。
「ゴメン、名前負けしすぎるわ。却下やね。」
…ですよね。
10年前にタイムスリップして、「花咲かじいさん」と麹の話をもっと熱弁していたら、もしかしたら名前が変わっていたかもしれませんね。(ないない。)
長文を最後までご覧いただき、ありがとうございます。
次回の味噌マガもお楽しみに。