【味噌マガ】土の中で
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■当たり前のことをいつまでも当たり前に…
越前有機蔵マルカワみそ
【味噌マガ】土の中で
蔵の菌と共に夢を醸す”味噌マガ”
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味噌マガ読者の皆様
こんにちは。マルカワみその河崎紘一郎です。
7月になりましたが、いかがお過ごしでしょうか?
マルカワ農園では、じゃがいもと夏そばの収穫を迎えました。梅雨の貴重な晴れ間に時間を確保し、収穫に励んでいます。このメールマガジンがお手元に届く頃、私はちょうどそば畑でコンバインにまたがっている頃かもしれません。
じゃがいもは、マルカワみその直営店舗の野菜コーナーで販売を予定しています。
そばは、石臼挽きにこだわった地元製粉所に出荷し、 越前市内のお蕎麦屋さんで使われる予定です。
大豆の連作障害対策として始めた蕎麦などの栽培ですが、取り組むたびに学びがあり、農業の奥深さを感じています。真摯に土や原料の大豆と向き合い、自分の引き出しを一つずつ増やしていけたらと思っています。
今回は「土の中で」というテーマでお届けします。
どうぞ、最後までお付き合いくださいませ。
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◆土の中で
今年も5月に大豆の種まきを行いました。6月以降に播くと梅雨の時期と重なってしまい、圃場がぬかるんで機械が入りづらくなるため、やや早めの播種を選びました。
とはいえ、早播きは私の中で不安です。芽が出るかどうか、今年もやはり心配でした。播種後の数日間、芽が出ていない圃場を見つめるたびに、胃がキリキリと痛む思いをしました。
「失敗したらどうしよう……」
「ナミダ、ナミダで新しい大豆の種を買わないと……」
そんな思いが頭をよぎりました。けれど、その心配は杞憂でした。
種まきから10日ほどの朝、圃場に小さな芽が顔を出しているのを見つけました。
大豆の芽が揃い、まるで緑の線が引かれたように整然と並んでいるその光景に、思わず心の中で「ほっ、よかった~」とつぶやきました。胸を撫で下ろすとは、まさにこのことだなと実感した瞬間でした。
大豆をはじめ、植物は種を撒いても、すぐには芽を出しません。「今だ」と判断したそのときに、大豆は自分の体の2~3倍以上にもなる根を、地中深くへと伸ばしていきます。
まるで、この大地にしっかりと足場を築くかのように、静かに、粛々と、土の中でその準備を進めているのです。
一方で人間である私は、どうしても目に見える結果や「育っている」実感を求めてしまいがちです。
食べ物を得たい。安心したい。
そんな生存本能からでしょうか、ついつい目の前に見えることばかりに目を向けてしまいがちです。
しかし、大豆は違います。明るい太陽の光を浴びて光合成をしたいのなら、上に向かって伸びる方がずっと効率的なはずです。
それでも大豆は、あえて抵抗の多い、暗く重たい地中へと命がけで根を張っていきます。
パッと見では非効率に思えるその営みに、私は「ものの見方」を問い直される気がします。
「とても簡単なことだ。ものごとはね、心で見なくてはよく見えない。いちばんたいせつなことは、目に見えない。」
フランスの作家サン=テグジュペリ(訳:河野万里子)の言葉が、大豆の見方と重なりました。
誰にも見えないところで、じっと根を張ること。目に見える変化や成果ばかりを追いかけるのではなく、まずは、誰も気づかないような苦労や、重くてつらいことからしっかり取り組んでいくこと。
それは決して楽な道ではありませんが、自然界の掟なのかも知れません。
だから大豆が育つ。と
大豆の姿からそんな大切なことを教えてくれているように感じました。
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若くない しかし心は 青年で
先日、「丹南農業青年クラブ」に入会し、初めて定例会に参加しました。農家同士のゆるやかな集まりを想像していましたが、行政の方も深く関わる、予想以上に本格的な会合でした。
会合では「若い世代に農業への興味・関心を持ってもらうには?」という議題が交わされ、8月には気鋭の農業経営者や福井県副知事、JA組合長との車座会も予定されています。
私は現在40代前半。プロ野球選手ですと、すでにベテランです。第一線で活躍している方はごくわずか。髪は薄くなり、白髪も増え、体を酷使したあとの疲労は、たとえぐっすり眠ってもなかなか抜けません。
先日、子どものプラモデル作成の手伝いをした時には手先がよく見えず、これが老眼か…と痛感しました。正直、体のあちこちに「老い」を感じています。
それでも農業の現場では、まだまだ「若手」として扱われます。現に新米農家ですし、なかなかないことなので、ありがたいことです。
身体的にはもう若手とは言えないかもしれませんし、青年クラブの在籍期間も数年かもしれません。
それでも、考え方だけは老け込むことなく、いつまでも若々しくありたいと心がけています。
「人は人によって磨かれる」という言葉があります。
私も価値観の異なる若手の方々とともに、これからも磨き合っていきたいと思います。
長文を最後までご覧いただき、ありがとうございます。
次回の味噌マガもお楽しみに。